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エコルの技術

4. 熱反射ガラスに傷が…

熱線反射ガラスに傷がつき身に覚えが無いにも拘わらず、ガラスクリーニング業者だろうと疑われ、挙げ句の果てに交換修理まで要求された経験のある方は、少なくないと思われます。

「1棟丸借りのテナントが退出してしまったビルを1年振りに清掃したところ、ガラスに傷があると連絡があったのは約2カ月程経ってからだった。行って見て驚いたのは、建物5階の外面に熱線反射加工されたガラスの傷が、あまりにもはっきりと長くついていることだった。3本の傷が、1枚の大ガラスの右上から斜めに真中下まで、1m強ほどの長さで付いていた。

その傷を見た瞬間、これは我々がガラスクリーニングで使用するスクイジーやシャンプーカバーによる傷ではないと思った。なぜならこの2つの用具はこのような動かし方はしないからである。しかし、窓ガラスの外面に一番触れる頻度の高いのは、我々ガラスクリーニング業者だから、状況として疑われるのも無理はないかも知れないとも思った。

ビルオーナー側からは、管理会社を通じて早く交換してくれと言ってきた。建物全部の熱線反射ガラスを調査して傷の地図を作成したのだが、熱線反射ガラス35枚の内、約5分の2ほどに大小の傷がついている。

交換の為の下見に、メーカー側代理人に来てもらった時『どうしてこんなキズがついてしまうものをつくるんだ』と、毒づいてしまった。保険会社と相談した結果、一番傷のひどい箇所1枚が保険で処理できることになったので、オーナーの了解の上で交換要請に応じた。高所作業車を使用した交換費用は二百数拾万円かかった。

この建物のガラスクリーニングを継続するにあたって、『ガラスに傷のつかない用具を使用しているので、これ以上傷が増えても当方の責任ではない』との申し入れをしようと考えたが断念し、現在は作業前後のチェックのみ行っている。傷の原因はいくつか考えられるが、真相は現在のところ不明である。

I 熱線反射ガラスの生い立ち

熱線反射ガラスは、透明フロート板ガラスまたは熱線吸収ガラスの表面に太陽光や熱を反射させる特殊な金属皮膜をコーティングしたものである。熱線反射ガラスは日射エネルギーを反射し冷房負荷を低減するとともに、そのハーフミラー効果によって今までになかった意匠性を建物に付与することとなった。

日本では昭和40年代初期から使用され始め、昭和45年の大阪万博を契機に一般建物から高層建築物まで使用されるようになった。昭和50年代後期から、新しい製法で製造された高性能熱線反射ガラスが現在では主流となっている。

Ⅱ 省エネとガラス

「通称『省エネルギー法』と呼ばれている法律が、昭和54年10月より施行されました。
ガラスは、建物の外周壁を構成する諸材料の中ても、特に薄くて熱を通しやすいものです。そのため大きな窓のある部屋は、夏には日射や外気温の影響を受けやすく暑くなります。
日本の場合、北海道や東北などの一部の寒冷地を除き、大部分の事務所ビルでは冷房エネルギーが支配的なので、ガラスの遮蔽性能を重視して考えなければなりません。」

Ⅲ 冷房効果の高いガラス

  • 熱線吸収ガラス
    ガラスの溶解時に原料に微量金属酸化物を着色剤として混ぜ、ガラス自体に着色したもの。
  • 熱線反射ガラス
    ガラスが板状に成形されてまだ高温のうちに、酸化金属の皮膜をスプレー式にコーティングしたもの。
  • 高性能熱線反射ガラス
    いったん製品となった板ガラスに、スパッタリングという真空を利用した手法を用いて、金属皮膜をコーティングしたもの。

Ⅳ ガラスの傷の影響について

  • 熱線吸収ガラス
    ガラス表面に傷がついても、全体の色に大きな影響はない。
  • 熱線反射ガラス
    コーティングがガラス自体と同程度の強度なので、一般のガラスと同様の傷のつきにくさとなっている。
  • 高性能熱線反射ガラス
    皮膜自身は強いが、ガラスから皮膜が剥離する場合があり、傷部分は明るく目立ちやすい。

モース硬度表

硬度1 滑石
硬度2 石こう
硬度3 方解石
硬度4 ホタル石
硬度5 リン灰石
硬度6 正長石
硬度7 石英
硬度8 トパーズ
硬度9 鋼玉
硬度10 ダイヤモンド

※ガラスは約6度

Ⅴ 熱線反射ガラスのキズの補修は可能か?

補修方法は金属膜をコーティングするか、別の塗料等で補修する方法が考えられますが・・・

  1. スプレー及びスパッタリング処理は工場でしかできない。できたとしても、重なる部分には明瞭な違和感が生ずる。
  2. 塗料で補修するとしても、細かいキズだけを薄い金属膜と同様な塗膜厚で補修することは難しい。
  3. メッキも考えられるが、塗膜厚の問題や他の部分への損傷などから採用できない。

従って、以上の理由からキズの補修はできないことになります。

Ⅵ メーカーのクリーニングマニュアルから

「コーティング面は実用上十分な強度を備えていますが、内装仕上げ工事及びクリーニング時にコーティング面を金属、竹、木、硬質プラスティックなどの硬度の高いものでこすると、傷がつく場合がありますので十分注意してください。」

※メーカーのマニュアルにはこのような注意書きがある。

1 クリーニング前の注意事項

①初めてクリーニングを行なうビルでは、目視によりガラス品種の調査を行い、(高性能)熱線反射ガラスかどうかの確認をしてください。

②すでに他のクリーニング業者が作業を行なっているビルでは、ビル管理会社の担当者立会い等により、汚れ、傷の確認後にクリーニングを行なってください。

2 クリーニング時の注意事項

①クリーニングの際に磨き粉のような砥粒を含んだ洗剤や酸、アルカリ度の強い洗剤の使用は絶対に避けてください。コーティング面を破損させる原因となります。

②クリーニングに使用する水は、必ず清水を使用してください。被膜面に付着した汚れの物質を溶かしたり、浮離させて除去する方法ですので、できるだけ微温湯を使用してください。

③クリーニングの際は、被膜面を損傷しないよう、ガラス面に付着した、微細な固形物を水で取りのぞいた後に、正常な布やゴムスクイジーで清掃してください。

④ゴムスクイジーで清掃した場合ゴムの先端には汚れが残っていますので、その都度汚れを落として使用してください。

⑤ゴムスクイジーを使用する場合、裏側の金具がガラス面に当たるような使い方をしますと、被膜面を損傷させますので絶対に避け、特にコーナー部での水切り時には注意が必要です。

⑥(ガラス下辺部には微細を固形物質が多く溜まるので)布やスクイジーでクリーニングする際にこの汚れを巻き込みながら、ガラス表面をこすると)被膜面を損傷させる原因となります。

⑦この汚れ(⑥の項)は予め刷毛や小型の真空掃除機などで清掃してください。

※次に、ひどい汚れのクリーニング方法がつづく。

①先ず、被膜面に付着している固形物質などを乾いた柔らかい布で除去します。この際、金属被膜をこするのではなく、軽く押さえて拭いとるように行ないます。ゴムスクイジーによる払拭は避けてください。次に、水拭き後仕上げ拭きとして乾いた柔らかい布を使用し払拭してください。

※クリーニングの際に、刷毛や小型の真空掃除機を使って、ガラス下辺部の汚れを除去したり、ひどい汚れの場合には、スクイジーを避けろ(使用するな)と書かれているが、実際にこのような作業が可能だろうか。

※また、熱線反射の被膜は「実用上十分な強度を備えている」ことになっているが、クリーニング時に上記のような配慮が必要だとすると、メンテナンス上問題の多い製品ではないだろうか。

Ⅶ メーカーからのメンテナンス方法についての検討提案

メーカーからは、スクイジーの見直しと標準的クリーニングマニュアルの検討提案がされています。

Ⅷ 防衛策としての用具の改良

  1. シャンプーカバーの改良ホック式からマジックテープ式へ
  2. スクイジーの改良ピンの不使用や液体ゴムによるスクイジー角部の養生

次号へ続きます。




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